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日時 平成19年11月10日(土)

さぬき市古墳勉強会第9回見学会

石清尾山古墳群

見学地



鶴尾神社4号墳写真

鶴尾神社4号墳


猫塚古墳

真ん中が円墳、両端が方墳という変わった形をした古墳です。こうした墳形を双方中円墳といいます。中円墳の頂上は現在、明治時代の大盗掘によって大きなくぼみになっています。京都大学の調査では中央に大きな竪穴式石室があり、周囲に小さな竪穴式石室が8基あったとあります。出土遺物は盗掘にあったものが幸運にも東京国立博物で買い上げられ、現在は東京国立博物館に収蔵されています。非常にたくさんの遺物があります。特に筒形銅器の3点は国内2位、鏡5面は県内最多の量になります。また、銅剣17個も古墳からの出土としては全国で1位を誇ります。
 古墳の大きさは96mで県内では富田茶臼山、快天山古墳に次ぐ大きさです。時代は出土遺物に時期差がありますが、古墳時代前期後半の古い時期と考えられています。


猫塚古墳墳丘測量図

猫塚古墳墳丘測量図

銅剣イラスト

銅剣

筒形銅器イラスト

筒形銅器



姫塚古墳

 全長43mの前方後円墳です。前方部の先端に四角の壇があるのが特徴で、積石が石垣状になっている箇所が見受けられます。京都大学の調査報告には石室を発見し、内部から鏡1、刀の破片1、土器1個が出土したとありますが、実態は不明です。伝わっている出土遺物には壷や円筒埴輪の破片があります。壷は石清尾山古墳群で一番古い鶴尾神社4号墳からありますが、円筒埴輪は壷より後の時代に古墳に見られるようになり、石清尾山古墳群では円筒埴輪が確認できる古墳の最初になります。なお、全長43mといえば、津田町の北羽立古墳や赤山古墳とだいたい同じ大きさになります。   

姫塚古墳墳丘測量図

姫塚古墳墳丘測量図

姫塚古墳の壺や円筒埴輪片

姫塚古墳の壺や円筒埴輪片


鶴尾神社4号墳

  丸井古墳と並び、讃岐で一番古い古墳です。古墳は高松平野が見渡せる尾根上にあります。全長40mの前方後円墳ですが、後円部の一部は採石によって一部崩壊しています。この古墳は讃岐最古にふさわしく、様々な点で古い要素と讃岐独特の要素が見られます。前方部が低くて細く、しゃもじのように開く形は鵜の部山古墳や丸井古墳と同様に古い古墳の特徴が表れています。竪穴式石室の軸が東西に向き、古墳の主軸とは斜めになる点も讃岐の前期前方後円墳の特徴といえます。また、後円部は、鉢巻状に取巻く外周段築があり、鵜の部山古墳と共通する要素です。土器は広口壷が弥生時代以来の伝統的な製作技法が見られます。竪穴式石室内からは方格規矩鏡(ほうかくきくきょう)と呼ばれる鏡の破片が出土しましたが、模様のある部分が著しく磨耗しており、世代を超えて伝えられた鏡の可能性が指摘されています。これを伝世鏡(でんせいきょう)といいます。  

鶴尾神社4号墳墳丘想定復元図

鶴尾神社4号墳墳丘想定復元図

広口壺

広口壺


石船塚古墳

   全長57mの柄鏡の形をした前方後円墳です。古墳の形、大きさ、時代で岩崎山4号墳とよく似ています。後円部の頂上には鷲の山産の刳抜式石棺があり、石枕が見られます。遺物は京都大学や高松市の調査によって壷や埴輪が採集されています。壷の形からは石清尾山古墳群の前方後円墳の中では一番新しいと考えられ、この古墳をもって積石塚の築造が停止したと考えられています。なお、1960年代に小竪穴式石室が発見され、中から変形神獣鏡が見つかっています。  

石船塚古墳墳丘測量図

石船塚古墳墳丘測量図

石船塚古墳出土刳抜式石棺

石船塚古墳出土刳抜式石棺


鏡塚古墳

  猫塚古墳と同様に双方中円墳という珍しい形です。猫塚古墳と比べて方墳部分が柄鏡の形になっており、猫塚古墳よりは新しいと考えられています。形は両方の方墳部分は同じ大きさで均整がとれています。全長は70mで大型です。明治時代、現地を訪れた笠井新也氏は方墳部分にそれぞれ1個、中円部の四方に4個の計6個の竪穴式石室があったと指摘されていますが詳細は不明です。  石清尾山の北東は北大塚古墳から石船塚古墳まで積石塚の前方後円墳が連なっていますが、鏡塚古墳はその中で一番高い場所に造られ、かつ大きいです。出土遺物がなく細かな時代は不明ですが、被葬者の権力の大きさが想像されます。  

鏡塚古墳墳丘測量図(梅原1933)より

鏡塚古墳墳丘測量図(梅原1933)より


北大塚古墳

  全長39.8mの前方後円墳です。保存状態がよく、古墳の形がよくわかります。前方部の先端には姫塚古墳と共通する四角の壇が見られます。また、石垣状の積石が見られます。京都大学による調査で丸底の土器の破片が採集されていますが。細かな時代は不明です。古墳に接して東の前方部側には方墳の北大塚東古墳、西の後円部側には前方後円墳の北大塚西古墳があります。  

北大塚古墳墳丘測量図(梅原1933)より

北大塚古墳墳丘測量図(梅原1933)より


石清尾山2号・3号墳

  石清尾山古墳群は古墳時代前期の積石塚のたくさんある古墳群として知られていますが、古墳時代後期の横穴式石室をもつ古墳も見られます。2号、3号墳は隣接して立地する円墳で同方向に横穴式石室が開いています。しかし、内部を詳細に観察すると様々な点で違いがあることがわかります。  


まとめ

  石清尾山古墳群は香川県の代表的な古墳で、全国的にも広く知られています。香川県の古墳といえば、積石塚が特徴ですが、まさに積石塚の一番集中する古墳群ということで、香川の古墳の特徴の最もよく表れた古墳群といえるでしょう。前方後円墳は讃岐で最古の鶴尾神社4号墳を皮切りに連綿と造立され、前期後半の石船塚古墳を最後に終焉します。それは、さぬき市津田湾で鵜の部山古墳が出現し、岩崎山4号墳やけぼ山古墳で終焉する流れとよく似ています。しかし、古墳の特徴は石清尾山古墳群が香川で特徴的な積石塚であるのに対して、津田湾は鵜の部山古墳以外は盛土墳で香川というよりは畿内と似た特徴が多い点で対比して考えると興味深いです。なお、石清尾山古墳群は高いところに古墳が造られていますが、海から古墳が見えるという点では津田湾の古墳と共通しています。今回の石清尾山古墳群の様々な特徴を津田湾の古墳と対比して観察してみると面白いと思います。  



石清尾山古墳群位置図


石清尾山古墳群位置図

石清尾山古墳群

讃岐地域主要古墳編年表2(東部) ー2004.12.24大久保ー

讃岐地域主要古墳編年表2(東部)

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